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大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)763号 判決 1965年9月30日

控訴人(被告) 和泉市農業委員会

補助参加人 切坂弥吉 外三名

被控訴人(原告) 田村楠太郎

主文

原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。

被控訴人の訴を却下する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。訴訟費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の関係は、

被控訴人において、

本件土地が与三郎の留保財産である旨の主張は否認する。本件土地は与三郎の所有であつたが、同人は昭和二〇年一一月一九日隠居したので、その長男田村楠太郎が家督相続により右土地の所有権を取得し、その登記は昭和二一年八月一九日に為されている。そして、同土地に対し昭和二二年一〇月二日自創法第三条の規定に基く政府買収により農林省が所有権を取得したと称し、同日補助参加人等へ売渡されたことになつている。昭和二二年一〇月二日当時、被控訴人所有の本件土地を、地元農地委員会は誤つて田村与三郎の所有であるとして、同土地に対し買収計画を樹て、これに基き、昭和二二年一〇月二日政府は買収処分をしたのであるから、同買収計画及び買収処分は絶対無効であること明らかである。被控訴人は、田村与三郎が隠居していても本件物件は依然として与三郎の所有であるとの意思を表示したことはない。

大阪府知事は、前にした買収処分が無効であることを知るや、再度の買収令書(発行日昭和三七年二月二四日)に、隠居被相続人田村与三郎、相続人田村楠太郎と記入し、これを昭和三七年二月二七日田村楠太郎に対し郵送した。控訴人はこれにより、与三郎に対する買収無効の瑕疵が治癒せられ、有効になつたと主張するが、これは失当である。買収令書は重要な文書であつて、大阪府知事が勝手に被買収者の名義のみを書換えることはできないものであり、買収期日前に被買収者に対し送達しなければならないものであつて、期日より一日おくれて送達されてもその買収令書は無効である。ところが、大阪府知事は初回の買収令書には被買収者田村与三郎としたのを、再度の買収令書には田村楠太郎名義に書換え、一四年四ケ月経過した昭和三七年二月二四日の発行日付で同買収令書を、昭和三七年三月一日に被控訴人楠太郎へ送達したのであるから、初回の買収計画書並びにこれに基く買収処分が有効になることは絶対にない。補助参加人等の補助参加の申立は参加の利益がないから異議がある。

本件で補助参加人等が補助参加の申立をしたのは、本件農地買収の目的物である土地に対する政府の買収処分が無効であることを前提としている。さすれば、右買収処分につき重大且つ明白な瑕疵があり、政府の右買収処分が無効であることも明らかである。補助参加の概念は、訴訟の係争中第三者が当事者の一方を勝訴させるため、訴訟に参加して、これを補助して訴訟を追行する形態である。ところが、補助参加人が取得時効の援用をすることは、前記補助参加の概念に反し、控訴人を敗訴させる結果となり、参加の利益がないことになる。それで、被控訴人は、右補助参加申立の却下決定を求めるため、異議を申立てる。

と述べ、

控訴人において、

本件農地について、横山村農地委員会が被控訴人の先代田村与三郎を所有者と表示して買収計画を樹立し、公告をしたところ、田村与三郎は、在村地主であることのみを理由として、自分の所有物件であることを認めて異議の申立をし、また本件でも自己の所有農地の買収に対して不服を主張したのである。このことは、本件物件はどこまでも自己の所有であつて、隠居していても、この物件は依然として自己の所有であるという意思を表明しているものである。一方隠居により相続したと称する被控訴人田村楠太郎も、この物件が田村与三郎の所有であることを認めて、与三郎により異議申立をし、また本訴を提起したものであり、被相続人たる与三郎と相続人たる被控訴人が、この物件を与三郎のものであることを認めている以上、真の所有者は与三郎であるといわなければならない。これを法律的にいえば、本件土地は留保財産である。留保財産としての登記のなされていないことを問う必要がない。従つて、農地委員会が真の所有者を誤つたとはいえず、これ以上、農地委員会に、真の所有者を発見し農地買収計画を樹立せよということは、委員会に対し不能を強いるものである。

もし、農地委員会が、反対に、被控訴人を所有者として買収したとしたら、被控訴人は純然たる不在地主(被控訴人は南池田村に居住していた)であり、不在地主でないという理由で異議を申立てることはできないから、被控訴人と与三郎が共に、所有者は与三郎であると主張して訴訟を提起した場合、訴訟はどうなるのか。真の所有者は登記簿上の名義で定めることはできないとしたら、この場合与三郎の所有と定める外はない(前記のとおり相続人、被相続人共に被相続人の所有だと主張するのであるから)。原審のように、民法は取引の安全を期するために設けられたもので、私法上の取引のみに適用されるとすれば、隠居の場合、与三郎が留保財産として留保したもので、しかも、留保の登記がなくても、国の買収の場合には対抗できると解釈するの外はないということになるのではないか。

被控訴人の先代与三郎は、昭和二〇年一一月一九日隠居して本件農地は昭和二一年八月一九日被控訴人が一応相続登記をしたのであるが、同年同月同日与三郎は売買予約の仮登記をしてその所有権を自己のものとする意思を明かにしている。隠居による場合、所有権を留保しなければ、相続により所有権は相続人に移転するのであり、その留保は登記簿上なされるべきものであることが規定されているが、その留保即ち隠居者が所有権を有していることを明かにする方法については別段の規定がない。本件のように売買予約という形式を採つて自己の所有権を保留することもあり得ることであつて、本件農地について、与三郎は隠居によつて所有権を相続人に移転せず、自己がなお所有権を有することを右形式によつて明らかにしたものであるから、本件農地は依然与三郎の所有であつたというべきである。

昭和七年頃から小作している本件農地の耕作者は、小作料を初めから与三郎に納めており、与三郎が隠居したと称する昭和二〇年一一月以降も、依然として、与三郎を所有者として、引続き小作料を納入しているのであり、これが隠居により被控訴人の所有となつたことなど知つたものは一人もいない。また与三郎も横山村に偽装的に寄留し、同村に他人の二階を借りて住んでいるように偽装し、不在地主であることを免れようとするような作為をしていたことは、どこまでも自己が本件農地の所有者であると意識しているからであつて、何人もどの角度から見ても、本件農地の所有者は与三郎であると認めなければならないような状況におかれていたのであつて、農地委員会が与三郎を所有者と認めたことは誠に当然であり、何等の過失がなく、真の所有者を調査することについて過失または怠慢はない。

仮りに、隠居者田村与三郎が本件農地を留保財産としたものと認められないとしても、隠居者田村与三郎と家督相続人である被控訴人との間に、与三郎隠居後も依然として本件農地を与三郎の所有として留保する合意があつたものというべきである。即ち、

(1)、本件農地につき、被控訴人の家督相続による所有権移転登記と同時に与三郎を取得者として、昭和二一年八月一五日売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされていること、

(2)、与三郎は隠居後も本件土地を依然自己の所有と考え、農地買収を免れるため、昭和二一年八月一六日本件農地の所在村である横山村下宮に転籍したり、昭和二二年二月二七日から同村で配給を受ける手続をするなど画策し、本件買収計画に対しても、本件土地を自己の所有であるとして出訴し、反対し、被控訴人は何ら異議申立の手続をとらなかつたこと、

(3)、耕作者等は何れも本件農地を与三郎から賃借耕作し、与三郎隠居後も依然同人を地主と考え、同人に小作料を納入し、与三郎もこれを受領していたこと、

等から、与三郎は本件農地を依然自己所有と考え、また外部へもこの行動を採つていたことが明かである。そして、右の様な確定日付のある証書によらない財産留保の合意は第三者に対してはその効力を主張し得ないとしても、当事者間においては、効力があるものと解するのを相当とするところ(昭和一四年五月二四日大審院判決、昭和二九年一二月二四日最高裁判所判決参照)、本件の場合控訴人は、この合意を認めて本件行政処分の基盤としたことを主張するものであるから、前記与三郎と被控訴人との財産留保の合意を否定すべき理由はない。従つて、本件で与三郎の所有物件として買収したことに何ら違法はない。

訴外大阪府知事は、田村与三郎の相続人である被控訴人に対し、本件農地につき昭和三七年二月四日買収令書の再発行をし、同年三月一日被控訴人に交付したから、本件農地買収は、与三郎の相続人である被控訴人に対し為したもので、買収について瑕疵があつたとしても、その瑕疵は治癒されている。

仮にそうでないとしても、本件買収物件の所有権は次のとおり補助参加人等の時効の援用により補助参加人等に帰属し、被控訴人はもはや所有権を失つているのであるから、所有権の回復を目的としてなされた本件訴訟は訴訟上の利益を失つたものであるから、被控訴人の請求は失当である。

と述べ、

控訴人及び補助参加人等において、

補助参加人等は、本件農地につき、次のとおり売渡を受け、その所有権移転登記を受け、民法第一六二条第二項により完全に所有権を取得した。

(1)、和泉市下宮町一九五番地 田三畝二歩

(2)、和泉市仏並町一九六番地 田八畝二〇歩

(3)、同所 一九九番地 田四畝二三歩

以上は昭和二五年七月二四日所有権取得登記 補助参加人小林茂所有者となる。

(4)、同市下宮町一〇二番地 四九畝二二歩

昭和二五年七月二四日所有権取得登記 植野実治所有者となる。

昭和三六年二月一八日植野昇相続登記。

昭和三六年五月二九日所有権移転登記(原因売買)により補助参加人切坂弥吉取得。

(5)、同所    九六番地 田五畝一歩

(6)、同所    九七番地 田九畝歩 畦畔一五歩

(7)、同所    九八番地 田九畝七歩外畦畔一六歩

(8)、同所  九七番地の二 田二歩

以上四筆昭和二五年七月二四日所有権取得登記切坂安太郎所有者となる。

昭和三七年二月一六日相続登記により補助参加人切坂弥吉所有者となる。

(9)、同所   二二八番地 田五畝一六歩外畦畔一一歩

(10)、同所   二三三番地 田一反四畝一七歩外畦畔七歩

以上二筆昭和二五年七月二四日所有権取得登記葛城松太郎所有者となる。

昭和三六年二月二二日相続登記により補助参加人葛城武治所有者となる。

(11)、同所    九九番地 田七畝二四歩

昭和二五年七月二四日所有権取得登記、補助参加人池辺フサエ所有者となる。

即ち昭和二五年七月二四日から起算して一〇年を経過した昭和三五年七月二三日に時効完成により所有権を取得した。

(イ)  「所有の意思を以て」補助参加人切坂弥吉の前主切坂安太郎及び植野実治、補助参加人小林茂、補助参加人葛城武治の前主葛城松太郎、補助参加人池辺フサエは何れも農地の売渡を受け、所有権取得登記を受けたのであるから、自分の所有物として、即ち所有の意思を以て占有を始めたことは明かである。

(ロ)  「平穏且つ公然に」前記の所有権移転を受けた者は、何れも前より小作関係で耕作していたもので、平穏で且つ公然であることも明かである。

(ハ)  「善意にして」前述の如く小作関係により耕作していたもので、何ら悪意なく、全く善意である。自創法により農地の売渡処分がなされたもので、補助参加人または補助参加人の前主が処分の効果として所有権を取得したと信ずるのは当然である。

(ニ)  「無過失」

(1) 補助参加人または補助参加人の前主が前記のとおり信ずるのは当然であり、行政庁の処分である以上そう信ずるについて過失がなかつたものとするのが当然である。

(2) 行政処分が適法である場合は勿論処分に違法事由があつても、取消されることなく処分が確定した場合には、処分の相手方は処分の効果としてその権利を取得するから、時効取得の要件たる過失の有無を論ずる余地がない。

(3) 過失の有無を論ずる必要は、処分に違法事由があつて、職権若しくは訴訟手続によつて取消され、さかのぼつて失効した場合、または処分に無効原因があつて当初から効力がない場合に生ずる。権利を取得したと信ずることにおける過失は、処分に取消原因たる違法事由があつて取消が必要的に予想されるのに、その点に思い及ばなかつた注意の不足、もしくは無効原因たる重大明白な瑕疵があるのに拘らず、それに気づかなかつた注意の不足ということに帰着する。ところが、行政庁の一般的権限に基いてなされた行政処分は、重大明白な無効原因がある場合を除いて適法の推定を受け、受手方を拘束する公定力を有する。従つて、行政処分の違法事由の存否について相手方に注意義務、調査義務を課することの不合理は明白である。無効原因の存する処分は、適法性の推定を有し得ないのであるが、この場合においても、法に基き法に従つて処分すべき責務を負う行政庁は、無効の瑕疵は存しないものとして処分をした、無効の瑕疵の存することに気づけば処分をしないであろうと、処分の相手方が考えるのは、極めて自然である。行政は常に善、常に正、悪をなさず、過失を狂さずということは勿論ない。しかし、処分の相手方の受取り方として、行政不善、不正、過失を犯すものと一応きめてかかり、行政処分に無効の瑕疵が存しないかどうかを疑わなければならないとするのは、甚だしく不都合であるし、そのような調査の能力も手段も有しない処分の相手方たる私人に調査の責を負わせ、過失の責を問うのは、何か特別の事情があつて、積極的な疑念を抱くのを当然とする場合を除いては酷に失するといわなければならないのである。

と述べた外、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(証拠省略)

理由

まず、補助参加に対する異議について判断する。成立に争いのない乙第一五号証の一ないし一一、第一六号証の一ないし四によると、補助参加人等は、それぞれその主張のように昭和二二年一〇月二日自創法第一六条の規定により本件農地の売渡を受け昭和二五年七月二四日その所有権取得登記を受けた者、またはその者から相続や売買により所有権を取得しその旨の登記を経由した者であることが認められるから、本件訴訟の結果につき利害関係を有すること明らかである。よつて、控訴人を補助するためなされた本件補助参加はいずれも適法で許容せられるべきものであり、被控訴人の異議は理由がない。

本件土地につき、控訴人和泉市農業委員会の前身である大阪府泉北郡横山村農地委員会が、被控訴人の先代である田村与三郎の所有であるとして、同人に対し、自創法第三条第一項第一号に該当するいわゆる不在地主の所有する小作地として、昭和二二年一〇月二日を買収の時期とする農地買収計画を定め、その旨公告したこと、与三郎は、同年八月六日横山村農地委員会に対し異議を申立てたが、同月一八日却下されたので、更に同月二六日大阪府農地委員会に対し訴願したところ、同委員会は、訴願期間徒過後のものとして単に請願として取扱い、なんら裁決をせずに右買収計画を承認したこと、与三郎は大阪府知事が右買収計画に基いて発行した買収令書を昭和二三年五月二〇日に受取つたことは、当事者間に争いがなく、原審証人吉田義夫の証言によると、右買収計画は昭和二〇年一一月二三日を基準日とするいわゆる遡及買収として計画されたものであることが認められる。

成立に争いのない甲第一七号証、乙第一五号証の一ないし一一に、原、当審での被控訴人本人尋問の結果によると、田村与三郎は、昭和二〇年一一月一九日南池田村役場に隠居届をしこれを受理されて、財産留保をせずに隠居し、被控訴人が同日家督相続の届出をしたこと、右隠居前に本件土地はすべて与三郎の所有であつたことが認められ、右認定を左右する証拠はない。

被控訴人は、被控訴人が右家督相続により昭和二〇年一一月一九日本件土地の所有権を取得した、従つて、遡及買収の基準日である同月二三日における本件土地の所有者は被控訴人である、ところが、横山村農地委員会は、認定を誤つて与三郎を所有者とし、同人に対し買収計画を立てたこと等の違法があるので、右買収計画を取消し、その買収計画について被控訴人の異議の申立を却下した決定の無効であることを確認することを求める等というのであり、これに対し、控訴人は、隠居者田村与三郎が本件土地を留保財産としたものと認められないとしても、隠居者田村与三郎と家督相続人である被控訴人との間に、与三郎隠居後も依然として本件農地を与三郎の所有として留保する合意があつたから、昭和二〇年一一月二三日当時本件土地の所有者は与三郎である等と主張し、本件農地買収計画、異議申立却下決定等に違法の点はない旨主張するのであるが、被控訴人の本訴の目的は、被控訴人が本件土地の所有者であることを前提とし、本件土地についての農地買収計画、その買収計画についての被控訴人の異議の申立を却下した決定等に違法の点があることを主張して、その取消、無効確認を求め、本件農地買収計画等による農地買収処分は無効であり、無効な買収処分によつて、もともと不変動である筈の被控訴人の本件土地所有権が国に移行し、さらに売渡処分によつて第三者に移転した外観を呈し、被控訴人の右所有権の享有に不安、危険を生じていることを解消するためなされたものであるというべきである。

ところが、本件土地は昭和二二年一〇月二日自創法の規定に基き買収がなされたものとして、同日売渡がなされていることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第一五号証の一ないし一一、第一六号証の一ないし四に、原審証人吉田義夫、当審証人小林茂の各証言、原、当審での被控訴人本人の供述、弁論の全趣旨を考え合せると、補助参加人等は、前示のとおり、それぞれその主張のように昭和二二年一〇月二日自創法第一六条の規定により本件農地の売渡を受け昭和二五年七月二四日その所有権取得登記を受けた者、またはその者から相続や売買により所有権を取得しその旨の登記を経由した者であること、補助参加人等は前主の占有をも合せて昭和二五年七月二四日から一〇年間以上所有の意思を以て平穏且つ公然に本件土地をそれぞれ占有しており、その占有の始めいずれも(前主においても)所有権が自己に属すると信じ(占有者は所有の意思を以て善意、平穏且つ公然に占有をするものと推定される)、こう信ずることに過失がなかつたものであることが認められ、右認定を覆す証拠はない。

時効取得は、原始取得であつて、他人の所有権に基いて取得するものではなく、時効は何人の所有であるかを問わず事実状態を権利関係に高めんとする制度であるところ、本件土地については、本訴で補助参加人等において、すでに前記のとおりの所有権の時効取得を主張してその援用をし、控訴人においても、本訴で被控訴人の訴訟利益消滅の事由としてこれを主張しているのであるから、被控訴人主張のように本件農地買収計画、その買収計画についての被控訴人の異議の申立を却下した決定等が違法であるとして、それが取消によつて遡及して無効となり、または当然無効のため、補助参加人等が農地売渡処分等によつて所有権を取得していなかつた場合には、補助参加人等は、前記のとおりの時効取得により、それぞれ本件土地の所有権を原始取得しているものというべく、いずれにしても、被控訴人はもはや本件土地の所有権を回復し得ないのであつて、被控訴人において本件訴訟を追行する利益はないものといわなければならない。

よつて、原判決中控訴人敗訴の部分を取消し、被告人の訴を却下することにし、民訴法第九六条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩口守夫 岡部重信 安井章)

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